日本を訪れた外国人の方は、日本人の礼儀正しさやサービスのよさなどから「日本人は親切」というイメージを持つ方が多いようです。そして日本人の人たちも、自分たちの国を「おもてなしの国」だと感じている人が多いのではないでしょうか。
しかし、人助けに関する国際ランキング『寄付指数調査2021』によると日本は114ヶ国中なんと総合最下位だったのです。

あまりの順位の低さに衝撃を受けました…
私は、日本はGDP世界3位の豊かな国のはずなのに、なぜ私を含めた多くの日本人はあまり寄付をしないのか不思議に思いました。このような寄付意識の低さは、富裕層やお金持ちにもいえるような気がしています。
しかし、日本人は困っている人を助けたいと思う「真心」をもっていると私は思います。決して冷たい国民ではないと思います。日常的な寄付は少ないかもしれませんが、東日本大震災など自然災害被災地支援には毎回多額の寄付金が集まりましたよね。
多くの日本人の心に「人のためになりたい」という意識があるのは間違いないと思います。
それなのに日本の寄付意識の低さはどこからきているのでしょうか。このテーマは多数のビジネス誌や寄付団体サイトでも取り上げられていますので、それらを参考に、自分を含めた日本人の寄付意識が低い理由を深掘りして調べてみることにしました。
この記事では、なぜ日本人が寄付をしないか、その理由をご紹介します。
日本は寄付指数ランキングで世界最下位の114位

まずは冒頭でご紹介した『寄付指数調査』について、もう少し詳しく説明します。
この調査は、イギリスのチャリティー機関「チャリティーズ・エイド・ファンデーション(CAF)」が毎年行っているもので、国ごとに下記の3項目でアンケートを実施し、その結果をまとめたものです。
①この1ヶ月の間に、見知らぬ人、あるいは、助けを必要としている見知らぬ人を助けたか
②この1ヶ月の間に寄付をしたか
③この1ヶ月の間にボランティアをしたか
2021年に発表されたレポートによると、日本は「①人助け」が最下位の114位、「②寄付」が107位、「③ボランティア」が91位で、総合最下位の114位でした。
そして、各国のランキングの結果は次のとおりです。
●総合ランキング(上位5ヶ国とG7を抜粋)
1位:インドネシア
2位:ケニア
3位:ナイジェリア
4位:ミャンマー
5位:オーストラリア
19位:アメリカ
22位:イギリス
35位:カナダ
85位:ドイツ
106位:フランス
111位:イタリア
114位:日本(最下位)
このランキングは2020年の「過去1ヶ月」が対象ですが、2019年から「過去10年間」のランキングでは、1位はアメリカ、2位はミャンマー、3位はニュージーランド、4位はオーストラリア、5位はアイルランドとなっています。

さすが、寄付大国アメリカですね!
「過去1ヶ月」の調査でアメリカなどの先進国の順位が落ちた理由は、コロナ禍のロックダウンなどの影響で、寄付イベントへの参加機会が減少したためとされています。
確かに、コロナ禍で気持ちに余裕がないと寄付は後回しになるような気がします。でも、全世界的なコロナ禍において、G7の先進国と比べて裕福といえない国々の寄付意識の高さは見習いたいですよね。
いったい日本の寄付意識の低さはどこからきているのでしょうか。そこには、どうやら日本人ならではの理由があるようです。それについて次からご紹介します。
なぜ日本人は寄付しない? ①寄付で「お金を失う」と感じるから

日本人は寄付すると「自分のお金を失った」と感じる方が多いのではないでしょうか。
例えば1万円を寄付した場合、自分のもとから1万円がなくなってしまったという喪失感や欠乏感を覚えるので、それが心の痛みにつながるということです。
そう感じやすいのは、日本人が「現金主義」であることもひとつの理由です。手元の現金が減ることで、失ったと感じやすいのです。
世界的にキャッシュレス化が急速に進むなか、日本はいまだに現金への依存度が高い国として知られています。実際、2020年の調査ではキャッシュレス決済の比率が約30%と、まだまだ現金決済が主流です。

特に高齢者の方はキャッシュレス決済に抵抗感をもつ人が少なくないようです。
本来、寄付は困った人を手助けする行為です。寄付を通じて自尊感情や幸福感が高まり、精神的な満足感を得られるはずなのですが、それよりも喪失感が先行してしまうのは残念なことです。
寄付をすることは、決してお金を失うことではありません。寄付は、自分にとって今は手放しても大丈夫なお金を、緊急的に必要としている人たちに渡して役立ててもらう行為です。そして、寄付した相手からは「感謝」というプラスのエネルギーにあふれたお返しをいただくことができます。
つまり、寄付によってお金の価値が目減りするわけでもなければ、寄付した人が損するわけでもないのです。
私は1年前から「貧困に苦しむ日本の子供たち」を支援するNPO団体に、少額ですが毎月寄付をしています。定期的に送られてくる報告メールや、子供たちからの感謝のメッセージを読むたびに、この子たちの未来のために少しは役立っているんだなと感じ、なんともいえない嬉しい気持ちになります。これからもずっと支援を続けようと思っています。
なぜ日本人は寄付しない? ②寄付の教育を受けていないから

まずは「日米英3ヶ国の個人寄付総額(2020年)」を比較してみましょう。
比較項目 | 日本 | アメリカ | イギリス |
---|---|---|---|
個人寄付金額総額 | 1兆2,126億円 | 34兆5,948億円 | 1兆4,878億円 |
名目GDP比 | 0.23% | 1.55% | 0.47% |
さすが寄付大国のアメリカは34兆円超と桁違いです。日本とイギリスの差はさほどないようにも感じますが、日本の寄付総額には「ふるさと納税」の6,725億円(寄付総額の55%を占める)が含まれていますし、GDP比では日本はイギリスの約半分ですので、やはり同等とはいえないでしょう。
また、CAFの調査によると、「過去1ヶ月」に寄付をした人の割合は日本12%、アメリカ45%、イギリス59%ですから、日本との寄付意識や社会貢献意識の差は明らかです。
欧米で寄付文化が根付いている理由として、宗教的な問題が大きいといわれています。キリスト教が生活に根付いている欧米では「富める人は貧しい人に分け与えるべき」という精神を幼いころから教えられます。
自分の力でお金を稼ぐと「このお金は自分のもの」と思いがちです。しかし、キリスト教では「すべては神様からの預かりもの」なのです。
また、欧米では学校における寄付教育もしっかりしているようです。アメリカやイギリスの学校では1年を通じて様々な寄付集めのイベントがあり、保護者も積極的に寄付するそうです。そのような環境で育った子供たちは、寄付はごく自然な行為という意識をつようになるのです。

世界的な富裕層やセレブが大金を寄付をするのは「稼いだらその分、社会貢献するのが当たり前」だからなんですね。
それに比べて日本では、学校で募金をする機会はあっても、それがどのように使われているのか、なぜ募金をする必要があるのかという教育が不十分だといえます。また、子供自身が募金先を選ぶ機会もあまりありません。
私も小学生のとき「赤い羽根共同募金」をしましたが、「寄付」について詳しく教わった記憶はまったくありません。自分で寄付先を選ぶという発想もなかったです。
つまり、寄付に関する知識も経験も少ないため、「人の役に立ちたい」という思いがあったとしても、寄付する行為に意識が向かなかったり、寄付に受動的になったりしているのだと思われます。
そのため、「寄付はうさんくさい」というネガティブな感情につながりやすいのかもしれません。寄付を集める側が、寄付金の使い方やそれが生んだ成果などを寄付者へきちんと報告することも必要ですね。
なぜ日本人は寄付しない? ③貧富の差が小さいから

日本は年々貧富の格差が広がっているといわれています。しかし意外かもしれませんが、日本は世界的にみて貧富の差がとても少ない国なのです。
というのも、日本の所得上位者の平均年収は世界的な所得上位者と比べて非常に低く、世界的な大富豪に匹敵するものすごい大金持ちはほとんどいません。同時に、発展途上国で1日200円で暮らしている貧困者ような極貧の人もほとんどいません。
つまり、一部のお金持ちを除いた多くの人が「自分はそれほど豊かではない」「自分は寄付をする側の人間ではない」と思っている可能性があります。
すでに述べたように「寄付すると手元のお金を失う」という考えにとらわれている場合、「豊かでない自分がなぜわざわざお金を失ってまで寄付をする必要があるのか」と思っても不思議ではありません。
しかし、私たちは日本に生まれたというだけで、世界的にみて非常に恵まれた生活を送っています。

日本で生活していると「いかに自分が豊かであるか」に気づきにくいですよね。
私たちが「今ある豊かさ」に気づくことができたら、寄付に対する意識も変わるかもしれませんね。
なぜ日本人は寄付しない? ④富裕層の寄付への理解が乏しい?

先ほども述べたように、欧米では富める者が寄付する文化が宗教的に根付いていることもあり、大富豪やセレブが大金を慈善団体に寄付したというニュースは当たり前のようによく聞きます。

貧富の差が激しいアメリカでは、お金持ちは寄付や奉仕活動をしなければ尊敬されないのだそうです。
一方、日本の富裕層の寄付についてはどうでしょうか。例えば大ニュースになるような大災害が起きたときに、芸能人や名の知れた経営者の方が被災地や被災者の方に寄付したことはニュースになっても、それ以外はあまり話題に上りませんよね。
本当に日本の富裕層、お金持ちは寄付をしている人が少ないのか、はたまた日本人の美徳として寄付や奉仕活動を公言していないだけなのかは定かではありません。
ところで、ソフトバンクグループ会長の孫正義さんは、2011年の東日本大震災において、被災者への義援・支援金として個人で100億円を寄付して話題となりました。
しかし「(震災を利用した)売名行為だ」「(震災時の)電波の不備をごまかそうとしている」「タダで製品を渡しても何年後かにカネを取る気だ」などの批判がネットで飛びかったのも事実。公言すると尊敬もされますが、敵も作るということです。
私は、義援金日本一の大きな社会貢献をしても批判されてしまった孫さんの姿を見て、多くの富裕層、お金持ちの人は、大きな寄付をして目立つことを避けるようになったかもしれないと思いました。一般的に富裕層の寄付に対する理解が進んでいなことが、お金持ちを寄付から遠ざけているのかもしれません。

せっかく大金を寄付したのに批判されたら悲しいですよね。
そしてもうひとつ、日本の富裕層が寄付に積極的になりづらい理由として、日本の税制の問題があるようです。日本はお金持ちから多くの税金を取り、桁外れの大富豪が生まれにくいのです。
また、寄付控除の制度はあるものの、ある一定金額は控除対象にならない自己負担部分があり、寄付金控除があることは寄付をする直接的な動機にはならないようです。
日本人の「寄付意識」は高まってきている

ここまで日本人があまり寄付をしない理由を述べてきましたが、最近は徐々にその傾向が変わってきています。『寄付白書2021』によると、日本における個人寄付総額を2016年と2020年で比較すると、約1.6倍に増えているんです!
比較項目 | 2016年 | 2020年 |
---|---|---|
個人寄付総額 | 7,756億円 (うち、ふるさと納税 2,844億円) | 1兆2,126億円 (うち、ふるさと納税 6,725億円) |
寄付者数 / 寄付者率 | 4,571万人 / 45.4% | 4,352万人 / 44.1% |
これらの背景には、ふるさと納税の普及や、SDG’sの認知が拡大して「ソーシャルグッド(社会に対して良いインパクトを与える活動や製品、サービスの総称)」に対する意識が向上したことが考えられます。頻繁に発生する自然災害の被災地支援をきっかけに寄付をする人も増えました。ロシアのウクライナ侵攻を受けて、ウクライナの方に寄付した方も多いでしょう。
また、寄付を募るNPO団体などがインターネットやSNSで情報発信を積極的に行うようになってきたことで、団体の理念や活動に共感した人が寄付するケースも増えていると考えられます。
そして、クラウドファンディングも最近注目されている寄付のひとつです。これは、特定のプロジェクトなどの実現のためにインターネットを介して不特定多数の人々から少額ずつ資金を調達する仕組みで、2020年度の国内市場規模は前年度比17.6%増の1841億7700万円(矢野経済研究所調べ)とのことです。

寄付にも様々な形があります。自分が応援したい団体やプロジェクトを見つけるのも楽しそうですね。
『寄付白書2021』によると、新型コロナウイルス感染症の拡大で「身近な人との助け合いの意識が強まった」という人が44%、「見知らぬ他者との助け合いの意識が強まった」という人が約30%とのこと。このような社会的価値観の変化も、寄付意識の向上を後押ししていますね!
寄付は「他者」と「自分」の未来への投資

じつは、寄付と投資は同じような意味合いがあります。寄付も投資も「今すぐに必要としないお金を持っている人」が、「今すぐにお金を必要としている人にお金を回してあげる」行為です。どちらも他者の未来への投資です。

投資をしない人=手元の現金を掴んで離さない人はそのお金が増えることはありません。
投資の場合は、そのお金を使って事業をし、利益が出たら「配当」や「利息」として戻ってきます。寄付の場合は、例えば貧困に苦しむ人たちに食事や医療を提供してあげられることで、彼らの暮らしをよくしてあげることができます。それに対するリターンは、彼らの未来のために善い行いをしたという「自尊感情」と、寄付した相手からの「感謝」です。とても豊かな気持ちになれますよね。
もちろん寄付は無理してする必要もありませんし、生活に余裕があるときに自分のできる範囲内で困っている人たちにお金を回してあげればよいと思います。私は現在、手取り収入の1%を寄付に回しています。もっと稼げるようになったら10%まで増やすつもりです。
しかしよく考えてみる、日本には寄付で支えあう文化が昔からあったといえます。例えば、社寺や仏像の建立、修理などのために「歓進(かんじん)」という寄付の習慣がありました。お寺の僧侶に読経のお礼として「お布施」をお渡し、寺院の維持費や活動費にしていただく習慣も根付いていますよね。
しかも類語辞典で「寄付」の類語を調べたら、醵金、拠出、浄財、義援金、出捐、献金、奉加金、カンパ…など、たくさん出てきて驚きました。こんなに「寄付」を意味する言葉がある国は珍しいのではないでしょうか!
日本人がもともと持つ「支えあいの精神」が、寄付という形でお金に困っている人に役立てられると、世界の未来はもっと豊かになるかもしれませんね!
コメント
私は障害者年金しか収入のない62歳女性ですが、昔から寄付が趣味のような性格で、40代前に離婚しても働けない体でしたが、ワールドビジョンという非営利団体に毎月4500円払って、恵まれない国の子供の里親をしていました。
英語で手紙を書いて、文房具や髪飾りを送っていました。
エチオピアとタンザニアとネパールとバングラデシュの女の子の里親をやっていて、お母さんが現地語で書いた手紙とそれを英訳した手紙をもらうだけで満足でした。
父親がお前は収入が少ないんだからやめなさいと言うまで続けました。
それをやめてからはセブンイレブンに行く度に毎日のように寄付していて、二度程、奇跡みたいなことが起こりました。
買ってもいないフランス語の辞書が突然現れたり、サザンや八神純子の買ったこともないCDが現れたり、買ってないサプリが現れたりしました。
一昨年の大晦日には5分置きに買ったこともない物が目の前に次々に現れてビックリしました。
髪飾りや入浴剤や貯金通帳入れやハンカチやマスクやとにかく20種類ぐらい現れて、時間がある程度経って消えた物もありました。
別にそれが目的で寄付をしているわけではないです。
父親が生きている限りセブンイレブンでの寄付はやめないつもりです。
トルコの地震とか聞くだけで直ぐに寄付したくなります。
どうして日本人は寄付しないのかさっぱり分からないです。